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さて・・・・・・、皆様の熱い要望にお答えしようかと・・・・・・えっ?社交辞令?いやぁ~ん。
しかしながら、バックナンバーを押入れに顔をうずめ、せっかく探したので、載せちゃうよ。 先に言っておくけど、内容には若干・・・真実とは異なる部分もあるからね・・・。コホンコホンッ。 ナンバー1 1995年<亥> K太郎5歳、moe3歳 登戸のあたりに住んでいたT一家。自営業がバブルとともに崩壊し、縁あって足立区に越して初めてのお正月・・・・だったろうか・・・。 A氏は佇んでいた。新春と呼ぶには余りにも冷え込んだ朝、煙草の煙は真っ直ぐにまるで天から差し延べられた蜘蛛の糸の様にたちのぼっていく。凍えた空気を切り裂くがごとく響いた郵便配達員の自転車の音が耳の奥で響きわたるのを感じた。A氏はアルバイトらしき若い配達員から年賀状を受け取ると、いつもは厳しく光る眼を和らげながら「御苦労様」と呟くように一礼した。配達員はそんなA氏の表情を読み取れなかったのか古く錆び付いたペダルを前へと押し出していった。 日頃からのA氏の交友の広さを示すかのように年賀状の束は軽く3センチを超えていた。A氏は吸いかけの煙草を肺の奥深くまで飲み込むと、手に取った年賀状一枚一枚念入りに眼を通し、差し出し人の顔を思い浮かべてはぶつぶつと軒先の牡丹にでも話し掛けるが如くその記憶の断片を整理していった。通りには近所の子供達だろう、羽根つきの懐かしい音がこだましている。年賀状が最後の一枚にさしかかった時、A氏はその神経質な眉をひそめた。「ない・・・」。あの家族の、脳天気とも思えるあの年賀状が届いていない。 T一家の果断に富んだ性格は知られていたし、「貧乏でも幸せならば・・・」という開き直った態度すらA氏はその寛大な精神をもって受け止めていた。毎年毎年懲りもせず5歳にして天才を自認する長男Kのイラスト入り年賀状を送り付けるあたりにも一種のポリシーすら見取っていたほどだ。「もしや・・・」。A氏はその明晰な頭脳と逞しい想像力が頭の中で縦横無尽に跳ね返る音を聞いた。夫Sの放蕩癖、妻Kの未だ断ち切れない女優への夢、長男Kの余りにも繊細な感受性、長女Mの天真爛漫な笑顔・・・どれを取ってもA氏には不安材料として充分に事足りるものである。A氏の想像の中にはこの世の不幸という不幸が渦巻き始め、その結果であろう脇の下に冷たい汗が流れるのを感じた。元旦の太陽はすでに屋根の上からA氏を照らしていた。 T一家の年賀状の遅れが、買い忘れに起因していた事実をA氏が知るのは、こののち10日程後になったことは言うまでもない。
by kana3160
| 2007-01-08 22:30
| 新春小説
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